介護の現場では、認知症の症状緩和のため、非薬物療法が用いられています。非薬物療法には、薬物療法のような副作用のないことが最大のメリットでしょう。抵抗力や免疫力が低下した高齢者にとって、副作用の大きい薬物療法はリスクが高いのです。薬物療法と併用か、もしくは薬物療法の代わりとして、非薬物療法が使用されるようになりました。よく用いられる非薬物療法としては、リハビリと呼ばれ活動を重視する理学療法や作業療法が知られています。
また、回想療法やバリデーション療法といった心理療法も有効です。バリデーション療法では、認知症患者の問題行動も全て意味あるものとして受け入れてもらえるので、高齢者の情緒不安定に寄与するというメリットがあります。このほかにも、園芸療法やレクレーション療法をはじめ、芸術療法やアロマセラピーからペットセラピーと呼ばれる動物療法や音楽療法に至るまで、様々なセラピーが存在します。こうした非薬物療法は、音楽や芸術などの特性をセラピーに生かしたものであり、認知症患者の適性に合わせた療法を選べるというメリットがあります。
土いじりが好きな高齢者には園芸療法が向いており、描画が得意な高齢者には芸術療法が適しています。音楽療法やアロマセラピーは、音楽を聴いたり香りを嗅いだりするという受動的な姿勢で効果を得られるので、動きの鈍化した高齢者にも施しやすいという長所を持っています。動物好きの高齢者は、猫や犬などのペットを撫でたり話しかけたりするだけで、脳が活性化し、認知症の症状緩和に役立つとされています。このように、利用者の好みなども踏まえて、非薬物療法を選択することが望ましいです。