認知症の方をどう介護すれば、利用者が有意義な人生を送れるかは、介護の担い手の課題といえるでしょう。認知症の治療する方法として、薬物療法と非薬物療法があります。特に非薬物療法は、認知症の方にとって良い効果を発揮しているだけでなく、介護サービスを受ける多くの利用者にも活用されています。非薬物療法はいろいろな種類がありますが、そのうち、音楽療法を例に挙げて、利点を考えてみます。
音楽療法とは、音楽を聴いたり、演奏したりすることで、健康を維持したり、心身の回復を目指すリハビリを指しています。歌や音楽を使ったレクリエーションは音楽療法の一環で、介護の現場でよく行われています。音楽療法のメリットは、認知症の予防効果が期待できることです。若いときに流行った歌を聴いたり、一緒に歌ったりすると、その当時の記憶が呼び起こされて、脳が活性化するようです。また、音楽を聴くと自然に体が動くので、日常生活の動作が回復するなど、身体機能の維持や改善が期待されます。大きな声で歌うと、腹式呼吸がやりやすくなり、姿勢もよくなります。
利用者の心の状態に合わせて、聞く音楽を変えると、感情のコントロールが可能になる場合があるようです。気持ちが沈みがちのときは明るい音楽をかけたり、イライラしたり怒りの感情を持っている場合は鎮静効果がある静かな音楽を使うといった具合です。利用者が集まって、一緒に歌う機会を設けると、歌を通してコミュニケーションが図れ、孤独感を軽減するのに役立つことも報告されています。